私的Mr.Children論(5) 〜究極のLove Story−男女問題はいつも面倒だ−

コンセプト・アルバム『深海』の中では珍しい、 実にポップな曲調から成っている 『ありふれたLove Story〜男女問題はいつも面倒だ〜』。
ところがそこで描かれる内容は実にシュール。 淡々と男女の出会いから別れまでを物語っているのだが、 ここで提言したいのは、この作品こそ「究極」のラヴストーリーソング なのではないか、という事。

男女の別れ話が何故究極のラヴストーリーなのか、と問われる向きも あるとは思う。が、この世の中において恋愛が成就した話と、 しなかった話のどちらが多いかと言われれば間違いなく後者であろう。
別れに至るまでの過程に何があろうと、例えそれまでが夢のような 恋愛であったとしても、最終的に「別れ」を経験した事のある人が 殆どの筈。そんな私達に向けられた非常に最大公約数的な恋愛談が この作品なのである。
というのも、そこで綴られる情景の 一つ一つが実にリアル。恋に落ちる道程、お互いの立場、 深まってゆく愛、やがて忍び寄る不協和音、訪れる別れ... 曲中に散りばめられている断片的な描写は、 誰もが一つは経験した事のあるものばかり。 「ありふれたLove Story」と題されるのも頷ける。

興味深いのは迎える結末が結局は「別れ」だという事。
前記の通り、如何に我々の周りに別れ話が多いかという事なのだが、
それに対する桜井君の答えが、
「−そして恋は途切れた 一切合切飲み込んで未来へと進め」。 なんともそっけない。
失恋の感傷にすがろうとする私達の心情を 見事に突っ返してくれる。当人にとっては大層な事でも悩むのは その時だけ、ぐずぐずしてないで全部ひっくるめてさっさと歩き出せ、 と詩うのである。−そうして結局はこの手のよくある話が また何度も繰り返されていくものなのだ、 というのが本作の真意故だろうか。
あえて「−男女問題はいつも面倒だ」と締めている点も含めて、 桜井君の見事なまでのセンスには、感服するばかりである。







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