・映画短評

さ、し い、う、えけ、こせ、そた、ち、つ
て、と、な行ひ、ふ、へ、ほみ、む、め、も、や行ら、り、る、れろ、わ行0〜9,A〜Z他


「サイコ」評価○
「スリラーの神様」アルフレッド・ヒチコックが自身の作品で最大のヒットを記録した代表作。効果的なカット割りを始め、相変わらずの手腕が冴えに冴え渡っている上、最盛期を迎えた後にもあえて本作のような実験的且つ野心的な作品を生み出す彼の情熱には感服。繊細な精神異常者、ノーマン・ベイツを演じたアンソニー・パーキンスも実に印象的。くれぐれも本作で彼を初体験と言う事のないように!本作以後、影のある役ばかりあてられるようになった事はあまりに有名。その強烈なイメージは拭えませんぞ。

「サスペリア」評価△
ホラー映画の奇才ダリオ・アルジェントの代表作。単なるショッキング・ホラーに甘んじる事無く謎解きものとしてもなかなかに良質。ただ、せっかく現実的且つ論理的に進めてきた構成もラストの一転してオカルトな展開で台ナシ。それじゃあ一端のホラーと変わらないじゃないか!もったいない。評判の殺人シーンも引っ張り過ぎでちょっとクドイ。ただ、どんな場面であろうとも有無を言わさず恐怖感を引起こさせるサウンドには無理矢理感を通り越して感服、正に不快度100% !! これを聞くだけでも観る価値アリか?

「サスペリア2」評価○
同ダリオ・アルジェント監督による 「サスペリア」の大ヒットにより急遽、それよりも以前に作られていた原題すら異なる本作が「2」名義で公開されたのは有名な話。しかしながら、しっかりと期待を裏切らないデキにまとまっているのはさすが。特筆すべきは謎解き物として巧みに観客をミスリードしていく展開の見事さ。最後まで犯人が誰なのか目が離せない。「1」で見られたショッキングな殺人シーンの数々や強烈なゴブリンサウンドも健在なのでファンなら要チェックだろう。

「ザ・セル」評価×
東洋的な様式美がこれでもかとばかりに主張してくるサイコ・サスペンス。 しかしながら西洋文化圏でこそウケるこの手の要素を逆輸入されてもハッキリ言って困り者。アカデミー賞受賞のデザイナー、石岡瑛子の仕事ぶりなんかも 同様で、消化しきれなかった物語構成を誤魔化すための補助にもなっていない。

「殺人論文」評価◎
スリラーにおけるストーリー展開の鏡のような作品。不自然なこじつけは一切無しでラストまで予測のつかない犯人像は、同系である 「スクリーム」シリーズのスタッフに本作を見て勉強させたい程に秀逸。メディアにおける暴力描写に対しての強烈な風刺を全編に含んだ構成と、その極めつけとも取れるラストは実に印象的。B級とは言え、ゴヤ賞受賞作品侮るなかれ。

「ザ・ビーチ」評価○
見るべき所の少ない筋立てを、主演レオナルド・ディカプリオの別の意味でのノリノリぶりが見事にカバー。本作で改めて「レオ様」という独自に確立されたキャラクター性の強さを実感させられた。面白い。最後に映される写真の中でこそ存在し得る楽園、というテーマも本筋がアレだった割に悪くない。

「ザ・ブルード 怒りのメタファー」評価△
全体的にB級の域を出ず、登場人物の深みや必然性にも疑問を感じる点が多数あるのだが、その恐怖描写は注目に値する。母親の怒りのエネルギーが生み出す不気味な生物が非常に活きており、服装や行動、掴みづらい表情等が私達の恐怖をより倍増させる。秀逸なのは、階段の手すり越しに階下を見ていたそれが逃げ去った後、血で出来た手形が手すりに残るシーン。駄作に留まらせぬ程の衝撃を与えてくれる、実に印象深いショットである。

「ザ・メキシカン」評価△
ブラッド・ピットとジュリア・ロバーツの豪華共演が実現した娯楽作。ご都合主義のストーリー展開に見るべき所はないものの、ブラッドのおマヌケなキャラクターが軽薄な作風にもぴったりマッチ。自身の役幅にも進境を見せており、主演二人の共演時間の少なさや、誉められないジュリアの演技を差し引いても決して駄作とまでは評価を落とせぬ一本に仕上がった。

「猿の惑星 PLANET OF THE APES」評価△
30年余の時を経て再創造されたSF大作。全体に監督のティム・バートン色が薄い無難な作りは一般人に嬉しく、ファンには悲しい。退屈はさせぬものの、彼ならではの世界観とか表現をもっともっと盛り込んで欲しかったと望むのは贅沢なのだろうか。従来の「猿の惑星」とは一線を画そうと力むあまりに、筋立てや設定が無理な方へ無理な方へと進んでしまった失敗点も含めて、 これではわざわざかの名作をリメイクしようとした目的自体が不明瞭。最新鋭の猿メイク技術も、やたらリアルな雄に比べ、人間との絡みがあるため旧作からさして進歩のない(人間ぽい)作りにせざるを得なかった雌メイクのレトロさが浮いていたのが残念。ディナも存在価値無し。それにしたって半狂乱のセードはどうよ。

「サンセット大通り」評価◎
名匠ビリー・ワイルダー監督による衝撃作。このような内容の作品をそのまま公開し、受け入れてしまえる当時の風潮には、感嘆する事しきりである。現代なら、実直すぎてやりきれないから鑑賞していられないだろうという点では、日本でのかぐや姫による「神田川」のヒットが似たようなものだろうか?(笑)その完成度の高さと主演であるグロリア・スワンソンの鬼気迫る演技には圧倒されるばかりで、観ている私達すらも身に詰まされる想いを味わう事この上ないが、映画史にハッキリとその名を連ねる名作である事もまた事実、心して観るべし。

「シェルブールの雨傘」評価△
全てのセリフが歌で語られる、ちょっと珍しい手法の作品。その効果はてきめんで、楽しい所はより楽しく、悲しい所はより悲しくといった具合に、展開は一層ドラマティック。ただ全部が全部その調子なため、場面が変っても延々と似たような愛を語り合う光景が続いたりと、本当の見せ場が不明瞭になったり一々大袈裟に感じるのも確か。一見互いに自立した道を歩いているかに見えるラストシーンも鵜呑みには出来かねる。夫のではない子を生み育てる女性こそが逞しくなっただけで、そうとも知らず男の方はのうのうと女性に依存し続けているに過ぎない。別の意味で見ていられないというのが本音。

「史上最大の作戦」評価△
ジョン・ウェインを筆頭に、目移りする程の豪華キャストで繰り広げられる戦争巨編。ノルマンディー上陸作戦における各国の動向を、誰が主役と言うでもない均等な視点(この点でオールスターなキャストは実に意義深い!)と、当日の模様だけをバッサリと断切った構成はドキュメンタリー的でありながらも、実にダイナミックで印象深い。様々な意味で映画史に名を残す大作。ラストで兵士が漏らす一言「彼は死亡、俺は重傷、君は迷子…戦争ってそんなものさ、結局勝ったのは誰なんだ?」の余韻も忘れ難い。

「シーズ・オール・ザット」評価△
レイチェル・リー・クック、フレディ・プリンツJr.主演の学園ロマンティック・コメディ。その古典的でおざなりなストーリー展開に目新しさは無いものの、安心して見られる分ヒロイン・レイチェルの可愛さが、よりクローズ・アップ。また、こうした作品では完全無欠に描かれがちなエスコート役ザック像にも、思春期特有の悩みを折り込んだ点と、それに対し、狙うと大抵消化不良で終わってしまうような説教がましい答えを提示させる事無く、作品の雰囲気に合わせたライトな消化ぶりで締めた点には素直に好感。ただラストのおまけ(?)はスタッフロール後に挟んだ方が良かったのでは?このために端折られてしまっている絶品の主題歌「KISS ME」をもっと聞きたいぞ!

「シックス・センス」評価○
オカルト・テイストもふんだんに盛り込まれた、ライト感覚ホラー。話の中心をシッカリと支えるヒューマン・ドラマが非常に活きており、無理なく感動させてくれるという、一端のホラー映画に甘んじない意欲的な姿勢は新鮮。ホラーとしてはめずらしい、万人向けの堅実な作品とも言えるだろう。あえて難を言わせてもらえば、全体を覆う「謎」にとらわれ過ぎ、結果全体にやや淡白となった感も。

「市民ケーン」評価△
オーソン・ウェルズを天才たらしめた彼の処女作にして最高傑作(一般論)しかし何がいいんだか、この映画。面白くないでしょ?話もなんも。結局謎は謎のままだしね。まあ製作者サイドには、色々御勉強になる映画でもあるし、一度は見ておくべきか。

「ジャイアント・ピーチ」評価△
ティム・バートン製作によるファンティメーション第2弾。前回の 「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」から更に進化したCGのクオリティは圧巻。反面ミュージカル部はかなり弱くなった感が。その他本作については実写部の導入に批判的な意見を耳にする事が多いが、その点については実写部を「現実」アニメ部を「夢」の世界だと解釈すれば、そこもしっかり意味を持つのではなかろうか。ただ個人的にはラストは「夢」から覚めた主人公が「現実」に戻ってその成長を示す、とばかり思っていたのだが…どうやら本編の感覚ではこの非常に「現実」的な世の中で「夢」を持って生きる事の大切さを説きたかったのだろうか?「−ありがとう、キリギリスさん!」

「ジャック・サマースビー」評価×
観客をラストまで引っ張る力を持った作品ではあるが、面白くも平板な印象。一見感動的に思えるストーリーもよくよく考えてみれば、主人公の心情には同意しかねる。人が過去の過ちを恥じ、心から自身を変えようと決意したなら『他人』になりきるのではなく、新しい『自分』として進もうとするのではないだろうか?他人のフリがそのきっかけに過ぎないのなら何もかまわない。しかし本作は主人公に「他人として死にたい」と語らせ、過去の自分だけでなく「素」である自分をも全否定してしまっている。果たして彼に、元の自分に対するプライドは?そのくせ結果は誰を幸せにするでもない只の自己満足。皆の事を思うなら自分を取り戻して生きていくのが筋であり、又過去への罪滅ぼしでもある筈。こんな人間、立派でも何でもないよ。

「シャロウ・グレイブ」評価△
ダニー・ボイル監督が「トレインスポッティング」に続いて再びユアン・アマクレガーと手を組んだ意欲作。彼の持ち味であるセンスの良い映像感覚はそのままに「トレイン〜」で見られた不満点は見事に解消。サスペンスでありつつも軽妙なエンタテイメントに仕上がった。ダニーはダニーでもこう作ってくれる分には文句無し。

「シャンヌのパリ、そしてアメリカ」評価△
タイトルに反して、物語の主格であるシャンヌが最後まで脇役に徹してしまっている点はどうだろう。原作が彼女の自伝的小説である事が、逆に周囲への客観性を強めてしまったのか。ストーリーテラーにもなりきらせず、何故かビリーの母親をクローズアップし過ぎる等あやふやな構成にも問題がある。ただし終始断片的な編集は、細かな事の顛末を描かぬ分、逆に私達を惹き付ける。主演のリーリー・ソビエスキーの魅力も光った。

「ジュニア」評価×
アーノルド・シュワルツェ・ネッガー主演のコメディ作。 “男性、それもあのシュワちゃんが出産!?”と唯それだけをウリにして最後まで引っ張る薄っぺらな内容で、勿論心には何も残らない。シュワちゃん&ダニ・デビートの名コンビ共演は嬉しいものの、これじゃあ売れる訳ないよなあ…良くも悪くもアイバン・ライトマンな作風だけはここでも健在。

「処刑人」評価△
スピーディーに展開する悪者退治のお話は、その簡潔さや男臭さが非常に劇画チックでカッコ良い。しかしながら手の平を返したように一転して問題提起となるラストは、物語自体をただ肯定するだけで終えさせぬ野心的な意気込みが汲み取れるものの、消化不良な印象が後を引く。回想シーンを上手に取り入れた構成なんかは効果的だったが。どうしたって目に付くウォレム・デフォーのある種感動的な演技はあざとくもあり、素晴らしくも有り。全編通していかにも△評価な一品でした。

「シリアル・ママ」評価×
この作品がマズイのは、観客に何を見せたいのかがハッキリしている割にそれを伝えるための作品構成がまるっきり為されていない点。嫌に漫画っぽい演出でコミカル・ホラー路線を突き進んだ中盤までの勢いのせいで、終盤の法廷シーンにはまるで真実味が感じられない。何よりもまず、シリアル・ママ逮捕への決定的要因となったハサミはどこいった?という訳で大衆の妙なノリとキャスリン・ターナーの怪演だけが心に残るおバカ映画。中でも「巻き戻せ!」は痛快?

「シン・レッド・ライン」評価△
テレンス・マリック監督久々となった新作は『戦場』という、正に生と死の境界線にある男達の模様を淡々と描き出す意欲作。純粋にそれだけを映し続ける本作では、戦争すら単なる舞台にしか過ぎず、全体が確固たるストーリーを成している訳でもない。その中で印象に残るのが、随所に割り込んでくる自然風景の描写。これらと戦争描写との調和はつまり、戦場での血みどろな殺戮や卑しい行いの数々も、美しい森林や太陽・動物達と同じく自然の一部に変りないという暗喩なのだろうか。万人には決して受けぬが、一部の心を捕らえてやまない作品として、いつまでも残るであろう名作。個人的にも三時間近い大作であるにもかかわらず、更に幾らでも長くできただろうし、又して欲しい作品だった。






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